生産プロダクトミックス算出の目的

生産プロダクトミックス算出の目的は、現生産能力の範囲内で限界利益を最大化する現状同様に出荷できる生産アイテム・数量の組み合わせと、アイテム別の収益貢献度を明らかにすることです。ここでは、4つのプロダクトミックスのうち、「短期的な生産プロダクトミックス」のもっとも基本的な内容を紹介します。


プロダクトミックスとは

ところで、プロダクトミックスとは何でしょうか。プロダクトミックスとは、企業の取り扱う製品と量の組み合わせを指しています。メーカーF社の例で説明しましょう。

◆メーカーF社の生産・販売明細

 品種A 300個
 品種B 600個
 品種C 500個
 品種D 800個 

単純な例ですが、メーカーF社のプロダクトミックスです。ここでは、生産と販売の内容を同じとしました。つまり、生産したものが全量販売されることを指しています。プロダクトミックスを取り上げる狙いは、収益が最大化する生産と販売の姿を明確にすることです。ここでいう収益は、売上高あるいは利益の意味で使用しています。収益本来の意味は、当Webサイトの経営管理用語を参照して下さい。


生産プロダクトミックスの定義

プロダクトミックスは4種類あります。本稿の生産プロダクトミックスは、その中の「短期的な生産プロダクトミックス」に相当するものです。長い名称なので、本稿ではとくにお断りしない限り、単に「生産プロダクトミックス」と呼ぶことにしました。定義は次のとおりです。

「生産プロダクトミックスとは、現生産能力の範囲内で限界利益を最大化する現状同様に出荷できる生産アイテム・数量の組み合せをいう」

ほかのプロダクトミックスについても知りたい場合は、本Webサイトの経営管理用語「プロダクトミックス」、あるいは拙著「収益改善の教科書」を参照お願いします。


見込み生産のプロダクトミックス算出

生産プロダクトミックスの算出例を紹介しましょう。単一生産ラインを対象に取り上げます。わかりやすくするため、単純な例にしました。


算出例1「単一生産ライン」

この例は、量産品を見込生産する単一生産ラインです。某メーカーの販売製品には、A、B、Cの3品種があります。販売側に確かめたところ、販売可能な数量は、A100個、B70個、C50個でした。販売単価から変動単価を引いた限界利益は、A20円、B30円、C40円となっています。1個当たりでは、Cが一番儲かるわけです。

1個造るのに必要な生産時間は、A1分、B2分、C5分となっています。一番儲かるCが、もっとも長い生産時間です。したがって、生産1分当たりの限界利益は、A20円、B15円、C8円となります。Cは1個の限界利益は最大ですが、1分当たり製造時間では最小の限界利益です。ただし、生産時間合計の制限は400分としました。各数値は、算出した後段の表で確認してください。では、ここで問題です。

生産時間合計の制限400分以内で、限界利益を最大化する販売可能な品種と数量の生産組み合わせはどのようになるでしょうか。

これが、生産プロダクトミックスの解を算出する問題となります。


■算出例1-1「1個当たり限界利益優先」

まず、時間当たり限界利益の大きい品種の生産を優先させてみます。

算出例1-1『単一生産ライン』
◆1個の限界利益が大きい順に生産・販売したとき
 単一生産ライン、生産制約時間 400分
品 種 単位
A B C 合 計
売上単価 30 50 70
変動単価 10 20 30
1個の限界利益 円/個 20 30 40
1個の生産時間 分/個 1 2 5
1分の限界利益 円/分 20 15 8
販売可能量 100 70 50 220
生産量 10 70 50 130
生産時間 10 140 250 400
限界利益 200 2,100 2,000 4,300
100.0

1個当たりの限界利益は、C→B→Aの順です。そこで、Cを販売可能量50個まで生産します。Cの生産時間は250分です。Bの販売可能量70個の生産時間は140分。生産時間に余裕があるので、生産組み込みは全量70個としました。残りの生産可能時間は10分です。Aの単位生産時間は1分なので、Aを10個生産に組み込みます。これで、ちょうど生産制限時間の400分です。最後に、限界利益を算出すると4,300円になります。表右下の数値は、算出値比較のため限界利益合計4,300を100とした意味です。


■算出例1-2「時間当たり限界利益優先」

次は、1分当たりの限界利益が大きい順に生産します。1分当たり限界利益は、A20円、B15円、C8円。そこで、AとBを販売可能量まで優先的に生産枠を確保します。幸い、両方生産しても生産時間は240分です。そこで、残り160分でCを生産します。Cは1個5分かかるので、32個生産可能です。これで、生産制限時間の制約400分となりました。限界利益の合計は5,380円です。

1個の限界利益が大きい順に生産した場合に比べ、表右下の数値が125.1で、25.1%収益が増えることになります。

算出例1-2『単一生産ライン』
◆1個の限界利益が大きい順に生産・販売したとき
 単一生産ライン、生産制約時間 400分
品 種 単位
A B C 合 計
売上単価 30 50 70
変動単価 10 20 30
1個の限界利益 円/個 20 30 40
1個の生産時間 分/個 1 2 5
1分の限界利益 円/分 20 15 8
販売可能量 100 70 50 220
生産量 100 70 32 202
生産時間 100 140 160 400
限界利益 2,000 2,100 1,280 5,380
125.1


■算出例1「単一生産ライン」の結論

算出内容を見ると一目瞭然です。すでに述べたとおり、時間当たり限界利益が大きい順番に生産・販売した場合の収益は、25.1%大きくなります。ここでは、極めて単純な例を用いていますが、生産設備や品種が多くても結論は変わりません。

実際の使い方では、まず現状の生産ライン等を対象に製品アイテム別に、1分あるいは1時間当たりの限界利益を算出してみます。つぎに、単位時間当たり限界利益の大きい製品アイテムの生産・販売想定量を優先的に生産割り付けした試算実施です。結果として、収益増を確認できるでしょう。同様の試算を何度か繰り返し、販売可能な生産割り付けを見いだせることになります。

現状の生産プロダクトミックスを算出した例は、収益改善講座「収益改善の分析資料」内にある「生産プロダクトミックス」の項にありますので確認して下さい。

  • 本稿の内容は、拙著「収益改善の教科書」日本能率協会マネジメントセンター発行の、第5章「プロダクトミックスを効率化する」の最初の一部に加筆したものです。拙著では、複数生産ライン、受注生産時のプロダクトミックスの算出なども分かりやすく解説しています。また、生産プロダクトミックスを実際の生産ラインに適用して算出した事例も紹介しました。算出結果の見方や対策についても紹介していますので、収益改善に活用できると思います。

(20141231 10:00)

(文字数 3063,2840(空白除く),漢字37%、190行(40字/行),原稿用紙10枚,テキスト5.6KB)

このページの先頭へ