収益改善に必要な資料

収益改善課題の検討には、それなりの資料が必要です。本稿における話の流れと、資料作成のデータ加工順番とは異なっています。たとえば、対策実施の優先度が高く収益力も強い製品を知るには、収益源マップと生産プロダクトミックス算出が欠かせません。しかし、生産プロダクトミックス算出には、単品赤字を顕在化させる採算分析を先におこなうことで、余分な作業を増やさずに済みます。そこで、資料作成のしかたは、ここでまとめておこなうことにしました。

新規事業への参入や事業の抜本的是正を検討する場合は、ほかにも資料が要求されます。たとえば、事業定義、製品群定義、製品定義、ビジネスモデルなどです。ここでは、現事業資源の活用度を向上させて早期の収益改善に反映させることを最大の狙いとしました。そのため、作成資料も限定しています。案作成に要する資料の作成目的と、概略は次のとおりです。

  1. 製品体系

    製品体系作成の目的は、製品群別のマーケット用途を知り、QCDSから見た問題・課題抽出に資することです。
    自社の製品を技術と用途別にツリー状の段階別などに区分展開させ、他社品と製品の開発動向を加味して作成します。通常、競合品と技術動向の調査が必要です。
    製品体系は、収益源マップのマーケット用途を設定するさいの元データとなります。

  2. マーケット収益モデル

    マーケット収益モデル作成の目的は、製品が売れる要件と要件の重要度を明らかにすることです。
    したがって、企業内の関係者が検討を重ねて作成することになります。本稿では、そのモデルを掲載していますので、参考になるでしょう。
    マーケット収益モデルは、競合分析するときの調査項目に漏れが起こらないように活用すること、強み顕在化と差別化のポイントを知る討議資料となります。まれに、競合分析の結果により当該モデルに修正が起こるかもしれません。

  3. 収益源マップ

    収益源マップを作成する目的は、事業収益源を知ることで、競合分析の優先分野把握、技術開発や原価低減などの投入資源の配分是正に資することです。
    製品別採算分析、製品体系、製品の用途区分(マーケットセグメンテーション)、生産時間をもとに作成します。
    また、顕在化された強みを知ることにより、用途開発の市場発見に活用可能です。

  4. 採算分析

    採算分析帳表を作成する目的は、固定費の回収実態と採算性を明らかにすることです。
    財務会計と管理会計のデータをもとに作成します。採算分析の種類は、製品別採算分析、得意先別・製品別採算分析、製品別・採算感度分析、得意先別・製品別採算感度分析の4つです。
    製品別採算分析は、生産プロダクトミックス、収益源マップ作成の元資料となります。

  5. 生産プロダクトミックス

    生産プロダクトミックスを算出する目的は、現生産能力の範囲内で限界利益を最大化する現状同様に出荷できる生産アイテム・数量の組み合わせと、アイテム別の収益貢献度を明らかにすることです(短期的な生産プロダクトミックスのケース)。
    製品別採算分析に生産時間を加えて算出します。
    生産プロダクトミックスのデータから、収益源マップ作成時の製造時間が提供可能です。

  6. 競合分析

    競合分析の目的は、マーケットに対峙する自身の位置づけを知り、マーケット収益獲得の対策立案に役立てるためです。
    自動車などの業界では、調査会社の資料があります。また、調査対象となる業界に工業会などあれば、資料を入手しやすいでしょう。それ以外の業界では、自ら収集することが基本です。
    収益改善計画を作成するために必要な情報には、マーケットシェア、需要動向、販売予測、販売価格、製造原価などあります。

  • 注.QCDS
    • QCDSは、品質(Quality)、価格(Cost)、納期や入手性(Delivery)、対応やサポート(Service)の水準を指す。製品により、量の供給能力、安定供給力、機能保証も必須である。機能保証とは、製品だけでなく、カタログ、取扱説明書があって初めて使い方がわかり、製品本来の能力が発揮されることを意味する。

つづいて、資料の作成方法あるいは見方を紹介します。


製品体系

製品群別のマーケット用途を知り、QCDSから見た問題点・課題抽出をすることが作成の目的です。製品体系は、事業の製品群がどのマーケット用途に提供しているのか、表やツリー形式で視覚化します。整理の仕方は単純ですが、縦と横軸の区分が意外にうまくいかない企業も多いものです。
次に例示したツリーでは、レベル1やレベル2の縦軸が、マーケット用途(マーケットセグメンテーション)となります。ここをうまく区分することがポイントです。
ツリーの横軸は、段階別に細分化していきます。製品や製品群とマーケット用途が、1対1の関係に整理できれば申し分ありません。そうすることによって、近隣への用途開発の展開検討に使える可能性が出てきます。

 製品体系
ツリーの体系図:製品体系

漏れが出ないように、競合品と技術動向の調査が必要になることがあります。マーケット用途としてはあるものの、自社では手がけていない部分の顕在化を図るためです。製品体系は、収益源マップのマーケット用途を設定する元データとなります。


マーケット収益モデル

差別化は、製品そのものだけの違いではありません。使用原材料や供給量の保証なども条件とされることがあります。売るため、あるいは買っていただくために備えるべく要件があるわけです。これら製品の売れる要件を抽出し、体系化したものが「マーケット収益モデル」に相当します。したがって、マーケット収益モデルの作成目的は、製品が売れる要件を明らかにすることです。

次の事例ではツリー状にしていますが、売れる要件を抽出していますので、同じ製品でも客先によって要件の数と重要度が変わる可能性があります。作成時には、要件の漏れがないことに留意して下さい。次の図は、電子機器メーカーの製品を対象にしたものです。

  マーケット収益モデル
ツリーの体系図:マーケット収益モデル

  • 競合品とツリー各項目の比較をして、強みの顕在化に活用する
  • サービスとは、製品の価値をわからせるためのおこないをいう。無償が原則である
  • 作成時のポイントは「製品がなぜ売れるのか」が網羅されることである
  • LT:納品リードタイムを指す

マーケット収益モデルとは

マーケット収益モデルは、最終需要者の顧客から見た商品、価格、量、機能保証の4つを包含した概念を指しています。商品は、商材、商圏、製品、サービスで構成されるものです。量は供給量、機能保証は製品以外のカタログ、取扱説明書等で使い方を理解してもらう意味で使います。代理店や商社の立場から見た場合は「商品」、メーカーの立場からは「製品」です。作成する場合は、ツリー各項目の規格、品質、具体的内容の明細が別途必要です。たとえば、製品の内容には規格、性能、品質などできるかぎり定量的にまとめます。


マーケット収益モデルの活用

マーケット収益モデルは、競合分析の調査項目設定、製品が売れる理由の顕在化、強みの顕在化に有効です。製品によってマーケット収益モデルは変わるので、それぞれ実態に合わせた構成が必要になります。マーケット収益モデル活用の1つとして、強みについて述べましょう。これまでの例から、技術オリエンテッド型の企業といっても、技術そのものが強みになることはほとんどありません。技術オリエンテッド型とは、技術の進化を生かして商品開発することを指しています。例を挙げましょう。

T社の製品は、電子機器に組み込む機能部品です。世界に先駆けた開発製品で、技術・品質では世界のデファクトスタンダードになっています。数度に及ぶ「強みの検討会」で得られた結論は、強みは技術そのものではなく、顧客対応力と供給力、品揃えだと認識されました。つまり、強みは顧客が決めるもので、技術を使って提供できる何かになるわけです。ここでいう顧客対応力とは、顧客が新製品開発段階で「こういうものができないか」と持ちかけてきたとき、試作品と試験データを添えて1週間で結果を提供できることを指しています。この「強み」を支えているのが技術だったのでした。

強みと技術は、コアテクノロジーとコアコンピタンスの関係と類似しています。コアテクノロジーが技術をいうのに対し、コアコンピタンスはその開発に必要な中核的能力と力量を表しているからです。
技術オリエンテッド型の逆が、市場オリエンテッド型です。これはどうしたら市場開拓できるかを視点に、競合商品の動向、生活の傾向、時代動向等に着目し商品開発することを指しています。


収益源マップ

収益源マップとは、マーケット収益を得るために活用される、投入経営資源の配分状況を表すものです。マーケットに対峙して事業収益獲得に活用される経営資源とその構造を表すことを狙っています。主な内容は、販売地域・用途別、製品規格・品質グレード別のマーケット収益獲得実態と、製造資源の消費時間の明示です。わかりやすさに重点を置いて作成しましょう。

収益源マップの目的は、製品群別・用途別・限界利益と、販売資源および製造資源貢献度の実態を知り、事業収益の源泉を明らかにすることです。業種・業態・企業規模により、つくり方が変わることがありますので、作成する目的を考えて取り組むことが欠かせません。

 収益源マップ
エクセルの表:収益源マップ作成事例

収益源マップ作成のポイント

上述したように、収益源マップの目的は事業収益の源泉を明確にすることです。掲載した収益源マップは、販売・製造資源別・限界利益をもとに作成したもので、このほかの形式もあります。たとえば、表横軸の販売資源貢献度を省略したもの、限界利益ではなく売上高や営業利益を使ったものなどです。本来は、限界利益を使うのが望ましいといえます。ただし、品種別に固定費が異なるときは営業利益を採用すべきです。また、複数の国や世界の地域別に作成するときは、税引き後の利益で比較することが欠かせません。それが難しいときは、便宜的に売上高で見ることもあります。販売資源貢献度は、品種別粗利益が異なるときに必要です。

表の縦軸では、製品群を規格・品質グレード別に区分します。前出の図表では、高規格品、汎用品、特殊用途品の3つに区分しました。望ましい区分のしかたは、製造資源貢献度とのかい離が明確になることです。縦軸の製品群をうまく区分できないこともあります。製品の用途が1つしかない場合です。化学プラントで、単一製品を生産するケースが典型的な例でしょう。1つのプラントで、少数製品を生産する場合にも同様のことがあります。このようなケースでは、競合類似品の用途も参考にすべきでしょう。

表横軸には、最終需要家から見た用途を入れます。前出製品体系のレベル1や2の縦軸を活用して下さい。いわゆる、マーケットセグメンテーションによる区分です。この区分を、あまり少なくすると収益源マップの意味をなさなくなります。マーケットシェア調査や、競合分析をしやすくするためです。収益源マップの数値は、1年分を対象とします。マーケットシェアの経時変化を見るときは、年次別に複数年分の作成が必要です。それから、品種別の限界利益、営業利益、生産時間が欠かせません。限界利益は、同マップの品種と用途の交点に入れるために必要です。横軸・用途をうまく設定できないことがあります。たとえば、次の場合です。

  • 最終需要家の用途が不明
    代理店販売のケースで見られます。
  • 国内外の販売区分が不明
    代理店販売で、同じ代理店が国内・海外に販売しているケースで見られます。競合分析などの関係からも、海外販売分は分けてとらえることが欠かせません。

横軸の区分は、販売管理の問題です。これまでの事例では、ベテランの方に手作業による集計をお願いしたこともありました。必要性と使い勝手を確認し、今後の管理方法に反映させるのが望ましいでしょう。マップ横軸の用途が把握されていないケースでは、使用用途に対する規格や品質の過不足が不明なことがあります。要求品質を明確にしておくべきです。


事例企業の概要

前出のマップでは、メーカーの国内複数工場で生産する製品群を対象にしました。製品は、主に自動車、電子機器、印刷向けの工業用の高機能材料で、国内マーケットシェアの過半を持っています。製品群別の粗利益率は高規格品が約45%、汎用品が約30%、特殊用途品が約35%です。価格競争は、汎用品で顕著になっています。高規格品は、性能、品質とも業界トップとの認識が一般的です。数値は簡略化しました。


数値の読み方

つぎに数値の見方を、高規格品の横軸を例に紹介します。高規格品の製品別・限界利益構成比は17.5%です。その右側にある販売資源貢献度のかい離率は-3.5%、製造資源貢献度のかい離率は-16.5%を示しています。販売資源貢献度のかい離率は、営業貢献利益構成比から限界利益構成比を引いて求めたものです。また、製造資源貢献度は、限界利益構成比から製造時間構成比を引いて算出します。

高規格品の限界利益は、同製品全体の17.5%稼ぎ出すのに、営業利益は同製品全体の14%しか稼いでいません。製造時間に至っては34.0%であり、他品種より多くの割合で消費しています。つまり、限界利益の稼ぐ割合に対し営業利益の割合は小さく、製造資源の消費割合が多いので割のよくない商売とみなすわけです。少々言いすぎかもしれませんが、手間暇をかけて造った割りには、固定費を回収する力(≒投資回収能力)が弱く、売り値が安いか、マーケットの評価が期待値に達していないのかもしれません。

プラス方向にかい離大きい製品群。今度は、汎用品の横軸を見てみましょう。汎用品の製品別限界利益構成比は60.5%、その右側にある販売資源貢献度のかい離率が9.5%、製造資源貢献度のかい離率が10.5%です。汎用品の限界利益は、同製品全体の60.5%稼ぎ出しており、営業利益は70.0%も稼ぎ出しています。さらに、製造時間の消費は50.0%です。つまり、限界利益の稼ぐ割合に対し、販売と生産資源の消費割合が小さいので割のよい商売と見ることができます。汎用品は、製造資源の50%使っているものの、それを上回る限界利益が得られており、マーケットからも高く評価され、当該製品群の中では稼ぎ頭の存在といえましょう。

同じように、電子機器の用途を縦軸に見ていきます。電子機器向けは、高規格品のみの販売です。製品群の中では、もっとも高規格で品質グレードの高さが要求される用途になります。用途別限界利益構成比は12.5%、販売資源貢献度のかい離率は-6.5%です。限界利益の稼ぎに対する、営業貢献利益構成比は低くなっています。ほかの品種に比べ、安値受注しているのが明らかです。この製品は、業界トップの性能・品質を持っていますので、より問題が大きいといえます。ほかの用途向け生産に比べ製造資源を多く消費し、技術的には難易度の高い領域ですが、改善余地は大きいといわざるを得ません。


事例収益源マップの所見

収益源マップの所見は、前述内容と一部重複しますが、次のとおりです。損益計算書や採算分析では、このような把握はなかなかできません。

  • 事業収益源への貢献度は、汎用品→特殊用途品→高規格品の順番です。これは、汎用品のほうがより儲かる結果を示しています。社内の認識では、高規格品の粗利益率が約45%と高いので、以前から一番儲かる品種と見られていました。そこで、当面、優先的に取り組むのは、儲け頭の汎用品と特殊用途品であり、とくに販促と製造原価低減に重点を置くべきです。

  • つづいて、当社の技術力の高さを示す看板といえる高規格品の収益向上策が欠かせません。1つめは、安値受注の縮小です。2つめは、相対的に製造資源を多く消費していることへの是正といえます。

  • コスト競争力の強化には、製造リードタイムの短縮を主にした製造・設備技術の開発が不可欠です。製造原価の労務費率、および売上高に占める販管費率が、他社より割高と想定され、外注、提携、工場の海外立地も中期的な検討課題になります。

  • 短期的には、品質とコスト競争力強化の観点から、委託加工、外注と内製化のメリット・デメリットを見極めた対策が必要です。とくに汎用品のコスト低減に注力し、利益率をさらに高めることが事業全体から見て有効となります。


収益源マップの活用

収益源マップを作成する目的は、事業収益源を知ることで、競合分析の優先分野把握、技術開発や原価低減などの投入資源の配分是正に資することです。事業収益源を知ることで、マーケットにおける自らの事業領域と依存度が明確になります。それを踏まえたうえで、収益改善の青図策定と中期経営計画への反映が不可欠です。

企業内の情報による収益源マップの作成では、結果的に内部のことしかわかりません。それなりの課題発見にはなるものの、達成すべき目標設定や競合品との差別化策の検討には不十分です。収益源マップから課題抽出後には、次に例示した競合分析の調査をおこないます。


品種と用途交点の競合分析

売上実績のある交点では、コスト分析、マーケットシェア、マーケットニーズに対する充足率、品揃えを主体に競合先と自社を比較します。目的は、収益拡大につながる対策立案の具体化です。詳細な調査項目は、強みの顕在化でも使えるマーケット収益モデルをもとに決めることをお勧めしています。

売上実績のない空欄交点では、用途開発によりマーケット開拓の余地があるか知ることです。そのため、売上実績のある交点と同じ競合分析をするのか判断が必要となります。

用途開発とは、マイナーチェンジを含む既存製品を新たな用途市場に投入し、事業の拡大を図る戦略のことです。製品だけでなく、そのもととなっているコアテクノロジー活用により新市場開発に結びつけることもあります。マーケット収益モデルの項でも述べましたが、コアテクノロジーとは事業成功の中核となる技術です。用途開発したとしても、競争力がおぼつかないと収益源となりえません。そこで、用途開発の検討開始段階では、強みの顕在化が不可欠です。


採算分析

最初に採算分析帳表の見方を紹介し、つづいて詳細解説をします。やや極端な例ですが、理解を深めるには好例でしょう。

 採算分析
エクセルの表:得意先別製品別の採算分析の見方事例

採算分析の見方

この採算分析例は、某メーカー大分営業所における2014年3月の得意先別・製品別採算分析の一部です。同社の営業利益は合計164,000円、営業利益率13.1%、損益分岐指数0.68となっています。法人企業統計による製造業の営業利益率は、1989年のバブル経済期でも5.0%でした。損益分岐指数では、0.70以下を優良な利益水準と判断でき、かなり儲かっているメーカーといえます。

同図表のNo.1の項目を左から右に見ていきましょう。平均売上単価13,000円、1個当たりの変動費である変動単価は7,000円、同1個当たりの限界利益である単位限界利益は6,000円です。単位限界利益は【平均売上単価-変動単価】で算出します。限界利益は固定費を回収する原資です。売上数量15個、売上高195,000円、変動費105,000円、変動費を売上高で割って求める変動費率53.8%、売上高から変動費を引いた限界利益90,000円、限界利益を売上高で割って求める限界利益率46.2%、固定費45,000円、固定費を売上高で割って算出する固定費率23.1%、限界利益から固定費を引いた営業利益45,000円、営業利益を売上高で割って求める営業利益率23.1%となっています。

損益分岐指数は同図表にあるとおり、固定費F÷限界利益MQが算出式です。そこで、固定費45,000円÷限界利益90,000円=0.50となります。0.70以下が優良な利益水準なので、やや儲かりすぎの傾向です。マーケットでは、競合製品の登場がありうるので差別化が必要となります。さらに収益力を高めるため、原価低減への改善努力投入を優先的におこなうべきでしょう。採算性の欄空白は黒字を示しています。

No. 2の行が、No.1よりも収益力が高いのがわかるでしょう。限界利益額が、例の中では最大だからです。抜粋したモデルだけで即断はできませんが、限界利益の大きさが収益力を測る物差しを示しています。

No.3の行は問題です。限界利益が黒字で、営業利益が赤字な状態を擬似出血と呼びます。損益分岐指数が2.17なので、売上数量以外の条件を変えずに一定とすれば、おおよそ2.17倍の売上数量になったときが、営業利益ゼロで損益の均衡点到達です。当面の課題は、擬似出血の解消となります。ただし、営業利益が赤字だからといって販売中止の判断は望ましくありません。限界利益が黒字なので、事業全体で見れば収益押し上げに貢献しているからです。限界利益の黒字は、固定費回収に寄与しています。黒字化策の例としては、顧客に代替製品を勧める、現製品に代わるマイナーチェンジ品を開発するなどです。

No.4は、大問題といわざるをえません。限界利益が赤字で、営業利益も赤字の真性出血となっています。売れば売るほど赤字が増える、真の赤字製品です。損益分岐指数は、マイナスのため計算不能となります。政治的な配慮がなければ、生産・販売とも中止すべきです。政治的とは、マーケットシェアを取りにいく戦略的な製品、技術力の高さを示すテスト販売、収益を度外視する政治判断の対象製品などを意味します。喫緊の課題は、真性出血の解消です。


採算分析でわかること

採算分析は、生産プロダクトミックス算出の元資料です。採算とは、費用を変動費と固定費に分解して限界利益対固定費の関係に直して見ることを指しています。つまり、損益分岐指数の算出結果を見ることに相当するといっていいでしょう。採算分析からわかることは、おおむね次とのとおりです。もちろん、資料のつくり方によって読み取り内容は変化します。

  • 販売予算と実績の差異分析(詳細は別途資料の必要なことが多い)
  • 営業利益
  • 損益分岐指数
  • 採算性(黒字、擬似出血、真性出血の別)
  • 量産効果(少し加工必要、次に用語解説あり)
  • アイテム増減時の営業利益の変化(シミュレーション実施)
  • アイテム統廃合の候補抽出に活用可能
  • 真性出血アイテム中止時の営業利益の増加
  • 営業利益赤字品の販売中止可否
  • 新製品上市時の想定営業利益
  • 製造余力の既存製品・新製品による活用策シミュレーション(別途資料必要)
  • 営業部門・個人の業績貢献度(評価基準により変化)
  • 品種別・営業利益貢献度(評価制度により変化)
  • 在庫増減による財務会計の営業利益との差異
  • 注.量産効果
    • 売上数量が増加することによって売上原価が一定割合で下がること。または、生産数量が増えることによって製造原価が一定割合で下がることを指す。損益分岐点売上(あるいは生産)数量分析で算出できる。

採算分析は、毎月作成する必要は通常ありません。利益が一定以上計上されている場合は、とくに問題とならないからです。ただし、顧客別あるいはアイテム別に赤字がある場合はチェックが欠かせません。この採算分析にも、いくつかの方法があります。ここでは、次の4種類を掲載しました。各帳表作成の目的はとくに付記していませんが、帳表名そのものが目的を表しています。

  • ①製品別採算分析
  • ②得意先別・製品別採算分析
  • ③製品別・採算感度分析(目標営業利益設定用)
  • ④得意先別・製品別・採算感度分析(目標営業利益設定用)

採算感度分析とは、採算分析と利益感度分析を一緒におこなう分析方法であり、採算検討のシミュレーションに活用できます。採算感度分析の目的は、目標に対する実態、採算性の把握、営業利益算出の変数の変化が固定費回収と営業利益増減に与える影響度を知ることです。ここでいう変数は、営業利益の目標増減率が該当します。目的により、任意に変更可能です。同概念を表す名称が見当たらないため、この用語は小生が定義しています。

利益感度分析とは、営業利益算出の変数による同利益への影響度を明らかにするものです。営業利益算出の変数は次のとおり。右辺式を構成する要素は、すべて変数です。これらの変化による、営業利益の増減を知ることになります。

営業利益=売上高-変動費-固定費
    =限界利益-固定費
    =平均売上単価×売上数量-変動単価×売上数量-固定費

採算分析帳表は、目的に応じた使い分けが肝心です。


生産プロダクトミックス

プロダクトミックスとは

プロダクトミックスとは、企業の取り扱う製品と量の組み合わせのことです。メーカーK社の例で説明しましょう。

◆メーカーK社の生産・販売明細

品種A 700個
品種B 500個
品種C 900個

単純な例ですが、メーカーK社のプロダクトミックスです。ここでは、生産と販売の内容を同じとしました。プロダクトミックスを取り上げる狙いは、収益が最大化する生産と販売の姿を明確にすることです。


生産プロダクトミックスの定義

小生は、プロダクトミックスを4つに区分しています。本稿の生産プロダクトミックスは、4つに区分している中の「短期的な生産プロダクトミックス」に相当するものです。名称が長いので、本稿ではとくにお断りしない限り単に「生産プロダクトミックス」と呼ぶことにします。定義は次のとおりです。

「生産プロダクトミックスとは、現生産能力の範囲内で限界利益を最大化する現状同様に出荷できる生産アイテム・数量の組み合せをいう」


生産プロダクトミックスで分かること

  • 製品別採算分析で分かることはすべて含む
  • 限界利益を最大化する生産アイテムと数量
  • アイテム別の収益貢献度、時間当たり限界利益

生産プロダクトミックス帳表の算出例

生産プロダクトミックスは、製品別採算分析の全部の項目に、収益貢献度、生産時間、時間当たり限界利益を加え、営業利益の変化を読み取れるように作成します。次の例は、現状の生産プロダクトミックスを算出したものです。横に長くなりすぎるため、表の横軸フィールドは一部省略しています。


 現状の生産プロダクトミックス算出
エクセルの表:生産プロダクトミックスの算出例

この事例は、生産能力に余裕のある産業資材メーカーです。算出結果は、赤字解消で、営業利益率が3.9%改善の余地ありと判明しました。表合計欄のとおり、現状の営業利益率は2.5%で、同じく、真性・擬似出血解消時の営業利益率は6.4%です。双方の差異3.9%が、当面収益改善すべき重点を表しています。同時に、赤字製品の解消策が必要です。販売側だけの努力で、黒字化は困難なケースが大半でしょう。収益改善は販売・生産・物流・開発のライン部門が、それぞれの役割に応じた対策が欠かせません。取り組むべき課題は、後段に紹介しました。


見方

採算分析帳表の見方は、前段で紹介済みです。そこで、採算分析帳表になかった項目のみ解説することにしましょう。表の明細行は、品種コード別・収益貢献度の降順に表示しています。

  1. 収益貢献度

    収益貢献度(%)=限界利益構成比÷生産時間構成比

    生産資源の消費割合に対する製品の収益性を表す相対指標です。特定生産ラインの全稼働時間に占める該当製品の稼働時間の割合を分母とし、該当全製品の限界利益合計に占める当該製品の限界利益の割合を分子にして算出した構成比を指します。単位は%であり、収益貢献度が高いとみなすのは100%以上です。

  2. 真性出血廃止時の増分営業利益の算出

    真性出血廃止時の扱い方はいろいろ考えられますが、ここでは当該製品を廃止したとして営業利益が増加する分を算出しました。したがって、変動費はその分ゼロとなり、固定費は変化しません。

  3. 擬似出血廃止時の増分営業利益の算出

    擬似出血の解消策もいろいろあります。ここでは、同一単価で売上数量の増加による赤字解消を前提に算出しました。売上数量を損益ゼロになるまで増加させます。


活用策

算出例は、現状の生産プロダクトミックスです。このあとの作業で、販売可能量の設定、仮説の生産プロダクトミックス算出へと駒を進めていきます。同時に、次の生産プロダクトミックスの改善視点をもとに、販売・生産・物流・開発等の関連部門を交えて、収益改善に役立つ方策の検討が必要です。


生産プロダクトミックスの改善視点

ここで紹介した現状の生産プロダクトミックス算出後におこなう対策を課題優先順に付記しました。生産能力に余裕がある場合の例です。置かれた環境により、取り組むべき課題と優先順位はもちろん変わりますが、参考になれば幸いと思います。もっと広い観点からとらえる場合は、続いて述べる「生産プロダクトミックスの視点」を参考にしてください。


収益改善への着手優先順位別の課題

  1. 真性出血の解消
    他製品への移行、原価低減による黒字化、値上げ、販売中止
  2. 擬似出血の解消
    原価低減による黒字化、販売数量増、他製品への移行、値上げ
  3. 限界利益の大きい製品の原価低減
    限界利益の降順に原価低減
  4. 高収益貢献度品の原価低減優先取り組み
  5. 高収益貢献度品への販売移行
  6. 高収益貢献度品の品質改善
  7. 真性・擬似出血品の代替製品発売と、同対象品からの販売移行
  8. 低収益品の廃止

生産プロダクトミックスの視点

次の表は、生産プロダクトミックス算出後に検討すべき課題をまとめたものです。見ていただいてわかるように、生産にとどまらず、部門横断で取り組む業際間課題であることが、ご理解いただけるでしょう。以下、表の主な視点を解説します。本稿では紹介していませんが、販売プロダクトミックスについても同様に適用可能です(拙著「収益改善の教科書」参照)。


生産プロダクトミックスの視点

生産能力不足
(=販売勝ち)
生産能力に余裕
(=生産勝ち)
受注生産
または
見込み生産
  • 選別受注
  • 高収益貢献度品への販売移行
  • 高収益品のコスト低減
  • 大口顧客の優遇
  • 継続性あるなら能力増強
  • マーケットシェアの一段階引き上げ(40%で首位独走)
  • マーケットシェア・アップのM&A
  • 限界利益黒字なら販売(原則)
  • マイナーチェンジ型販促
  • 高収益貢献度品の販売促進
  • 高収益貢献度品のコスト低減に優先取り組み
  • 需要減少続くなら能力削減
  • M&Aによる寡占化
共通
  • 新製品開発
  • より儲かるビジネスモデルへの再構築

  1. 高収益貢献度品

    前節で述べたように、収益貢献度は生産資源の消費割合に対する、製品の収益性を表す相対指標です。たとえば、ある製品の限界利益が全体の20%として、同製品に対する生産時間の消費が全体の10%あったとします。この場合の収益貢献度は200%です。平均値は100%なので、同製品全部の売上によって得られた限界利益は、倍の収益力を持っていることになります。

    生産資源消費の考えかた。生産資源の消費量を測る物差しは時間です。生産設備などの製造固定費は、いったん投資すれば、稼働率の高低にかかわらず一定額発生します。稼働しなくても固定費は変わらないので、稼働時間を生産資源の消費時間とみなすわけです。この考え方は、全部原価計算とは相容れない管理会計の領域になります。参考ですが、財務会計には時間の概念がありません。

    高収益貢献度品の生産と売上が一定割合まで高まると、相対指標の収益貢献度は限りなく100%に近づき、いずれは同%を下回っていくはずです。その時点で、再び高収益貢献度の売上を伸ばす過程を繰り返すことが要請されます。らせん階段を登るように、スパイラル曲線を描きながら収益力が高まるのを期待しているわけです。

    「高収益貢献度品への販売移行」を促すのと「高収益貢献度品のコスト低減」に優先的に取り組むのは、双方とも投入努力に対して期待される効果が大きく出てくることによります。

  2. 大口顧客の優遇

    大口顧客の優遇は、1つの定石かもしれません。当該顧客のさまざまな要求を聞きながら、さらに製品改良を重ね競争力強化につなげることが重要です。

  3. 継続性あるなら能力増強

    生産能力不足欄の項目です。販売継続と拡大が想定される場合は、慎重に生産能力増強に踏み切ることを推奨します。

  4. マーケットシェア

    ランチェスターの法則「マーケットシェア理論」をご存じの方は多いでしょう。英国生まれの法則を日本人の手で発展させ、ビジネスの世界に応用できるようになったことは有名です。

    ある製品の、現マーケットシェアが12%とします。売上拡大をめざす企業では、何%のマーケットシェアを当面の目標とすべきでしょうか。この目標設定と、マーケットシェア段階に応じた内容を体系的にまとめたものが、マーケットシェア理論です。これによれば、めざすべき目標は19.3%と示されています。一般には、切りのいいところで20%とされることが多いようです。

    販売勝ちの状況ならば、ぜひ一段高い目標設定をしてもらいたいと思います。

  5. M&A

    M&A(Mergers  and  Acquisitions)は、小生がお手伝いした案件でも数社あります。その中の建材メーカーA社の例です。限定された需要を、相当数の企業が過当競争気味に乱立していた時期がありました。収益性悪化のため、身売り企業が出始めた頃です。A社は、積極的に買収に乗り出したのです。小生がお手伝いした頃には、国内マーケットシェア70%超でした。原材料高騰による値上げもしやすくなり、高収益企業として名を馳せるまでになっていたのです。参考ながら、マーケットシェア理論からすれば、70%のマーケットシェアの次の目標は73.9%が示唆されています。

    M&Aでも、時期により2つの状況が見られます。1つめは、リーダー企業が存在しないマーケットです。需要増も見込みにくく、低いマーケットシェア同士の企業が乱立して、半ばつぶし合い状況になっており、各企業は、赤字や低収益に悩んでいる状態といえます。マーケットから撤退が始まろうとするこの時期に、M&Aを仕掛けて寡占的な地位を占める方法です。建材メーカーA社は、このタイプに該当します。2つめは、大きなマーケットシェアを持つリーダー企業がある場合です。さらにマーケットシェアを拡大すべく、M&Aを進めるタイプが該当します。

    実際にM&Aするかどうかは、企業理念や方針などとの関連もあるので、いちがいにはいえません。ただし、企業収益の拡大視点からは、検討の余地が十分あると考えます。

  6. 限界利益黒字なら販売

    生産能力に余裕がある場合の視点です。限界利益は、固定費を回収する力といわれます。製品販売にあたり、限界利益が黒字であれば営業利益増に貢献するので収益改善に寄与できるからです。そのため、限界利益が黒字であれば販売するというのが、この方策となります。

    これには、確かに一理あり、間違いとはいえません。とくに、生産に余裕があるとき、価格競争になったとき、売上確保が要請されるとき、特定顧客との取引に参入するときなどが該当しやすいでしょう。反面、リスクが生じます。いったん下げた販売単価は、値戻しが困難になりがちだからです。結果的に、低収益性の継続となる傾向が見られます。

    そこで、目標とする営業利益率を下回る単価で販売する場合、歯止め策の同時作成が欠かせません。当面の販売単価にした理由、目標販売単価、あるいは目標営業利益率まで引き上げる計画作成が相当します。いったん、低収益性におちいった企業では、低収益性そのものが当たり前と思うようになるから不思議です。中には、全アイテム数の4分の1が営業利益赤字の実例も見かけます。これまでの経験から考えても、短期間に全品黒字化させるのは困難です。

  7. マイナーチェンジ型販促

    現製品の目先を変えた、新製品発売による販促です。食品や消費材の業界では、以前から頻繁におこなわれています。結果として、過剰とも思われるアイテム数になる事例があとを絶ちません。

    マイナーチェンジ型の販促は、消費材に限らず、乗用車などの業界でもよくあることです。自動車業界のフルモデルチェンジは、通常3~4年ごとになっています。この間の1~2年目に、少し手直ししたモデルを発売し、ユーザーを引き留めて買い換えを促す販促法です。一般に、「買い換えマーケティング」と称しています。

    留意事項は、投入努力と得られる収益の見合いです。食品業界では、単品の営業利益が把握されていない企業もしばしば目にします。たとえば、売上だけの目標を持った、マイナーチェンジ型の新製品発売があるとしましょう。需要が伸びているときは、利益があとから付いてくるかもしれません。しかし、需要増が見込めない場合は、単品の収益管理を先行させるべきです。生産プロダクトミックスに余裕がある場合でも、同じことがいえます。

  8. 需要減少が続くなら能力削減

    製品の生産が開始されたときのマーケットと、現在の状況は各企業とも様変わりしていると思います。マーケットは、一企業の思惑と離れて変わるからです。それも、速いスピードで変化する分野が増えています。それに反し、生産設備はすぐには更新できにくいものです。とくに、投資がかさむ企業ほど方向転換が困難となることを意味します。ようするに、メーカー生産資源の活用方法と、マーケットの需要にかい離が発生するということです。これを顕在化させる手段の1つが、生産プロダクトミックスといっても過言ではありません。ここでは紹介していませんが、編成効率は生産能力と現生産のかい離度合いを収益から見ようとしています。できるなら、生産品種の異なる生産設備ごとに、編成効率は算出すべきでしょう(拙著「収益改善の教科書」、または当Webサイトのメルマガ第91号を参照)。

    マーケットの変化に生産資源、とくに生産設備の対応度が低くなった時点(≒低稼働率の状態)で、固定費削減に踏み切る決断も必要となるに違いありません。小生も、スクラップ&ビルドの提言を数度経験しています。このスクラップ&ビルドは、老朽化や陳腐化により、物理的または機能的に古くなった設備を廃棄し、高性能の新鋭設備に置き換えることです。小生のお手伝いした企業の1つは、それを機に海外に工場を設置しました。

  9. 新製品開発

    既存の生産設備を活用した、新製品の開発が狙いです。新技術の開発をともなうこともあるので、短期的には困難かもしれません。生産プロダクトミックスとは別に、メーカーとしては継続的におこなうべきです。新製品が想定される場合には、収益貢献度の試算も一緒におこなうことを推奨します。

  10. より儲かるビジネスモデルへの再構築

    ビジネスモデルは、儲かる事業のしくみのことです。本稿での解説は省略します。詳細は、拙著「収益改善の教科書」をご覧下さい。

上記項目は、自社でおこなうのか、関連会社等でおこなうのかによっても、選択肢はいろいろです。M&Aとは逆に、事業譲渡も視野に入ってくるかもしれません。ここでは、内容が多岐にわたるため検討課題としての紹介にとどめました。


競合分析

マーケット収益を獲得するための事業が置かれている、マーケットの実態を需要構造と呼んでいます。需要構造を知る目的は、マーケットに対峙する自身の位置づけを知り、マーケット収益を拡大させる対策立案に役立てるためです。マーケットの実態とは、マーケットの需要動向、製品に対する要求仕様、競合先の原価や技術・財務などの総合力を指しています。競合分析は、これらの需要構造を把握するための一部分です。

  • 注.マーケット収益
    • マーケット収益とは、顧客の望む効用と満足提供によって得られる対価、またはマーケットから得られる製品ライフサイクル期間中の総売上を指す。

競合分析では、製品群別・用途別のマーケットと同じ領域を収益源とする、現在の競合先・潜在競合先の情報収集と分析が欠かせません。潜在競合先とは、新規にマーケット参入する相手先を指しています。技術開発型の企業では、一般にこの部分の対策が手薄になりがちです。自らが新規参入時の段階で想定できなくとも、継続的に情報収集を試み、それを差別化に活かすことが欠かせません。

競合分析の調査は、調査会社の活用、調査会社の報告書入手、競合他社の公知資料・訪問や電話等によるヒアリング、工業界など業界団体の調査資料入手などによります。実際は、調査会社の活用はお勧めできないことが大半です。製品知識、業界用語、技術などを知っていないと満足な調査ができないことによります。そこで通常は、自社の営業、技術、購買担当などによる、競合他社の公知資料収集と訪問による周辺情報収集と分析が現実的でしょう。訪問先は、競合他社に直接できれば申し分ありません。難しい場合は、競合他社と取引関係にある代理店・需要家に面談することです。調査の基本は、自らの足で稼ぐしかありません。念のため―。

需要構造を知るための資料は、おおむね次のとおりです。実態に応じて増減があります。すでに述べた資料も含んでいますが、とくに定型的なワークシートはありません。実態に合わせてつくるためです。

  • 用途別マーケットシェア(基準年度と向こう5年度分)
  • 用途別需要・販売予測( 基準年度と向こう5年度分)
  • 販売単価比較(対象製品の競合先との比較)
  • 財務比較(自企業と競合先の比較)
  • 製造原価比較(対象製品の競合先との比較)
  • マーケット収益モデル
  • 強みの顕在化・体系化
  • 収益試算( 想定シナリオ別・予想損益計算書、基準年度と向こう5年度分)
    ここでいうシナリオとは、事業年度別に新製品やアイテム増の想定売上案を想定した、年度別の経営計画あるいは利益計画を指しています。

(20141123 10:15)

(文字数 17494,16882(空白除く),漢字41%、1095行(40字/行),原稿用紙55枚,テキスト33.9KB)


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